Jiraud(ジラウド)との出会いを振り返る③

Bass

2001年のある日Jiraudに行くと、福田さんと談笑する1人の男性がいた。

その男性は非常に恰幅が良く、まるで和製アンソニージャクソンのような方だった。

「福田さん、Euclidのセッティングを見てもらいたいんですけど。」

そういって楽器をケースから出すと、男性が話しかけてきた。

「君か!僕の狙ってたEuclidを買ったのは。」

え!?

僕以外にも狙ってた人がいたんだ…

そう思いながら会釈をすると、福田さんがこう言った。

「蓮池くん、初めてだっけ?彼はプロベーシストだよ。」

プロを目指している蓮池少年は目を輝かせた。

「そうなんですね!蓮池っていいます。よろしくお願いします。」

「よろしく。ちょっとEuclid弾いて良い?」

断る理由もないので楽器を手渡したのだが、これまたすごかった。

ドゥーン・トゥクトゥクトゥ・ベラベラベラ・バキッドキャッズキュ

密度の高い出音、なだらかなフレーズ、そして何よりドラムと合わせているわけでもないのにめっちゃグルーヴィー。

福田さんとは違うタイプだったが、一瞬で格が違う人だとわかった。

「やっぱり良い楽器だね。買えばよかったなぁ。」

「ははは、いいじゃん。金子くんは何本も持ってるんだから。」

男性はRomeo金子さんといって、その当時第一線で活躍されていたベーシストだった。
(MISIAさんのレコーディング(ライブサポートもだったかな?)や、SPEEDのライブサポートなどをやられていたと記憶している)

当時という言葉を使ったのは、もう何年前になるだろうか…すでにお亡くなりになられているから。

その訃報もJiraudで聞いたのだが、福田さんが大変残念がっていたのを覚えている。

Romeoさんとはその後もことあるごとにお店で顔を合わせた。

というか、Jiraudに行くと大抵いらっしゃったのだ(特に平日のお昼すぎ(笑))

福田さんはRomeoさんのプレイを認めていたし、Romeoさんも福田さんをリスペクトしつつ、ご自分のプレイや音色を追求されていて、2人の会話に聞き耳を立てる時間がとても楽しかった。

右手親指と人差し指のミュート奏法

いつだったか、右手の親指と人差し指を使ったミュート奏法を福田さんとRomeoさんが研究している現場に出くわしたことがあった。

「あ、それ、この前テレビでアンソニージャクソンがやってましたね!(矢野顕子さんのバック)」

というと、

「あ、蓮池くんも見たの?この弾き方、ジェマーソン奏法を解明するヒントになると思うんだ。そう思ってたら金子くんが以前からやっていてね。彼上手いんだよ。」

当時から福田さんはジェームス・ジェマーソンの奏法を研究されていた。

後の福田さんの答えは、ピックアップ、Funk Groover(コンプレッサー)、ラベラのフラット弦+スポンジミュートにピックアップフェンスを使った人差し指奏法というものだったが、その前に右手の腹でミュートしながら親指と人差し指を動かす奏法なのではないかという仮説を立てていた時期があったのだ(何のこっちゃわからない方ごめんなさいw)。

親指だけを使ったミュート奏法はよく見かけるが、人差し指を使うことでハネのグルーヴが出しやすくなり、ミュートしているので太いアタックを得ることができる。

そして、Romeoさんはその奏法がすこぶる上手かったのだ。

Romeoさんの指はものすごく関節が柔らかかった。

親指の反りかえり、人差し指の柔軟さは決して真似できない代物だったし、だからこそあんな太い音を出せていたんだと今では思う(2フィンガーやスラップももちろん凄かった)。

僕は指の関節が固いタイプなので全く歯が立たなかったが、親指と人差し指で弾くことで出せるグルーヴと、ミュートの音色を盗ませていただいた(笑)

この奏法は今でも結構多用していて、BLU-SWINGでは「満ちていく体温」をライブで弾く際に使っているので良かったら(Aメロです)。

Romeoさんのセッティングに影響を受けたメインベース

Romeoさんが新しいベースをオーダーする瞬間に、偶然にも立ち会ったことがある。

それは真っ白なジャズベで(5弦だったと思う)、

「いま白いジャズベ使ってるプロプレイヤーいないでしょ!」

と自信満々におっしゃったので、

「江川ほーじんさんとか…」

と空気を読まずに答えたら、

「あ〜、ほーじんさんがいたか…くそー」

と、悔しがっていたことを覚えている(笑)。

ちなみにその楽器は現行モデルとは少し違う仕様になっていて、Moebiusという回路とパッシブトーンの組み合わせだった。

「なんでアクティブ回路だけじゃなく、パッシブトーンも入れるんですか?」

と聞くと、

「バラード弾く時とかさ、EQのセッティングはそのままで、ちょっとハイを落としたいことがあるんだよね。」

Romeoさんはそんな風に教えてくれた。

なるほどと思った。

というか、僕もそんな風に思っていた。

その後何年かして、蓮池はJBass5という楽器を福田さんにオーダーすることになるのだが、RomeoさんのMoebius+パッシブトーンの回路を採用し、今もメインベースとして使っている。

なんの気ない会話だったが、今の自分を形成する財産になってくれているなと改めて感じる今日この頃である。

つづく

蓮池 真治

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ベーシストの蓮池真治です。 このホームページは大好きな音楽のこと、ベースのこと、趣味など「今の自分」を発信していけるプラットフォームにしたいと思い、立ち上げました。ブログ中心のサイトになりますので、お時間のある時にごゆるりとお楽しみください♪

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