「こんにちは!弦を買いにきました。」
お店の扉を空けて福田さんに話しかける。
Euclidという4弦ベースを購入してからというもの、大体月2〜3回ペースでJiraudに通っていた蓮池。
ただし、弦を買いにきたというのは単なる口実で、福田さんに色々ベースのことを教えてもらいたかったのだ(とはいっても毎度弦を買えるほど裕福ではなかったので、単純に「遊びにきました」ということもザラだったが(笑))。
そんなお金にならない少年に対して福田さんはいつも優しくコーヒーをご馳走してくれた(Jiraudに行ったことがある人にはお馴染みの光景かな)。
さて、お店に行ったときの流れはというと、
弦を購入(ここは飛ばされることもある(笑))
↓
Euclidの状態を見てもらう
↓
新しい楽器があったら試奏させてもらう
↓
コーヒーを飲みながら談笑
というものだったが、最後の「談笑」がポイントである。
憧れの人にベースの弾き方について質問できる時間なのだ。
この日はここの所の悩みをぶつけてみた。
「最近なんか左手が腱鞘炎気味なんですよ…」
そう言うと福田さんからこんな答えが返ってきた。
「腱鞘炎は良くないね。ちょっと弾いて見せてくれる?」
そして僕の左手のフォームを一通り見てこう言った。
「蓮池くんは親指でネックを挟みすぎだね。それじゃあ手首に負担がかかっちゃう。左手の親指は使わなくても弦を押さえることができるんだよ。ほらね。」
福田さんは楽器を手にすると親指を使わずに弦を押さえてみせた。
「これはガットギターなんかの指の使い方なんだけど、まずは体を中心に右腕で楽器を押さえる。するとネック側が上がるでしょ?それを左手で引き寄せるみたいに弦を押さえるだよ。シーソみたいな感じかな。そうすると親指で挟まなくても良いでしょ?」
「親指で強く挟むと手首を痛めてしまうし、なだらかな運指ができなくなる。親指は添える程度でいいんだよ。大切なのは力を入れずに楽器を弾くこと。体のどこかに力が入っているフォームは良くないんだ。これは右手も左手も同じことだね。いかに脱力するかがポイントだよ。」
これが福田さんからの最初の教えだったように思う。そしてこう続けた。
「まずは左手の痛みがおさまるまで楽器を弾くのをやめなさい。1週間かかるかもしれないけど痛みがなくなってから正しいフォームを練習しないと癖になっちゃうからね。」
こうして僕は、腱鞘炎が治ってから左手のフォームを研究し始めた。そしてそれ以降、エレキベースが原因で腱鞘炎を発症することはなくなった。
また、自分がレッスンする立場になってからは、いかに手首に負担をかけずに押さえるか、脱力する大切さを必ず教えるようにしている。
「親指は添えるだけ」
これが左手の運指において大切なポイントだと思っている(某バスケ漫画と似ているが気にしない(笑))
あと、左手に限らず体の故障は、プレイヤーにとって深刻な問題に発展しかねない。
楽器を弾いていてどこかに痛みや違和感を感じることがある人は、その部分に何かしらの負荷がかかっているということなので、自分の奏法を改めてチェックしてみることをお勧めする。
つづく