自分のベースを手に入れてからというもの、弾きまくる毎日を過ごしていた。
1番最初にコピーしたのはGLAYの「SHUTTER SPEEDSのテーマ」だったと思う。この曲はJIROさんの作曲でベースの音がよく聴こえ、なおかつ雑誌に楽譜が載っていた(GIGSだったかなぁ)のでこの曲を選んだ。
割とすぐ弾けるようになったので、「僕、やっぱり音楽の才能あるな」と自画自賛し、次はついに憧れのXの曲に取り掛かった。
が、しかし、おじいちゃんから借りていたCDラジカセからはベースの音がほとんど聞き取れず、何曲か試行錯誤したのだがどうにも音符がわからない…
ということで、大枚を叩いてバンドスコアなるものを入手した。
Xのメジャーデビューアルバム「BLUE BLOOD」のバンドスコア。
大好きなBLUE BLOOD、X、紅、オルガスムなど、全て音符とTAB譜(音符ではなく、何弦の何フレットを押さえればいいのか分かる譜面)がついていたので、ワクワクしながら音符を解析しつつ練習した。
「まずは紅から始めよう!」
そんなふうに思ったのだが、紅は16分音符を多用する楽曲だったため初心者には弾けず、比較的8分音符が多かった「X」という楽曲からスタートした。
8分音符が多めと言っても速い楽曲なので、譜面通り弾けない部分もあったが、その時はラジカセに耳を押し当てて、そこから聴こえてくる微かなベース音を頼りに、想像しながらベースラインを作っていった。
ちゃんとコピーすることも大事なのだが、楽曲に合うベースラインを自分で考えるというのは、ある意味プロベーシストの原点とも言えよう(都合の良い解釈)。
そしてついに1曲通して弾けるようになった。
感動だった。
自分があたかもXのメンバーであるかのような気持ちになり、高揚感に包まれ何度も弾いた。
そこからは破竹の勢いでスコアに載っている曲たちをコピーしまくった。だんだん体が慣れてきたからか、紅の16分音符にも少し対応できるようになってきた。
因みにベースのチューニングは常に全弦半音下げ(笑)
(Xの楽曲は低音をしっかり出すためなのか、基本的に普通のチューニングより半音下げたチューニングで演奏されている。)
この頃唯一失敗だったと思っているのが、この半音下げチューニングだ。ピアノを幼少期からやっていた僕は当時、全体音感に近いものを持っていた。しかし、半音下げチューニングをひたすらやったせいか、頭が混乱して音程が分からなくなってしまったのだ。
ある程度ベースという楽器を正しく弾けるようになってからXをコピーすればよかったと今になって思うが、過ぎてしまったことはしょうがない(笑)
とまぁ、そんな感じでベースの腕は着々と上がっていった。そして次第にこんな感情が芽生えてくる。
「バンドを組んでみたい」
そう思った僕は中学校を卒業した春休みに、少し仲の良かったドラムをやっている同級生に思い切って電話をしてみた。
「僕、ベースを練習していてXの曲が弾けるようになったんだけど、一緒にバンドやらない?」
その友達の答えは、
「ごめん、今忙しいから無理かな。」
残念でしかたなかった。でも無理なものはしょうがない。
とりあえずその時は諦めて、高校に上がったらバンドメンバーを探そうと思った。
が、後々この電話が僕の人生を大きく変えることになったのだ。
つづく