両親の反対を押し切って始めたアルバイトは、厳しかったけどものすごく楽しかった。
中学時代はあまり友達がいなかった僕だったが、同僚や先輩方と仲良くなり、充実感に包まれた春休みを過ごしていた。
さて、そうこうしているうちに高校の入学式を迎えることとなる。
蓮池少年が入学した高校は中高一貫校。中学からエスカレーター式に進学したこともあり、目新しさはあまり感じなかったが、メガネからコンタクトレンズに変え、意気揚々と登校した。
いわゆる「プチ高校デビュー」である。
そんなある日、同級生でリーダー的なグループが、こっちをニヤニヤ見ながら話している声が聞こえた。
「コンタクトにしてかっこよくなったのぉ(笑)」
「高校デビューっていうやつじゃないん?」
そして、こう言った。
「一緒にバンドやろうやぁとか言ったんじゃろ(笑)」
震えた。
そのグループには、以前「バンドを組みたい」と思って電話し断られた、中学生の時に少し仲が良かった子もいたのだ。
バンドを断られたのもショックだったのに、まさかそれを人にバラして一緒に笑うなんて…
こらえようと思ったが、廊下でどんどん涙が吹き出してきた。
その後どうしたかはあまり覚えていないのだが、気付いたらバイト先に到着していた。
すると、社員さんが声をかけてくれた。
「おまえ、学校どうしたんや?」
「いや、ちょっと嫌なことがあって…」
「ふーん、なんかようわからんけど、暇ならおれや(居なさい)」
確かシフトは入っていなかったと思うが、傷ついた僕に居場所を作ってくれたのだ。
その日を境に僕は高校に行かなくなった。
今考えれば大した原因じゃないし、同級生を恨んでもいないのだが、当時の僕にはかなり大きな出来事だったんだと思う。
また、悲しくもあったが同時に、初めてできた自分の居場所が嬉しかったんだろう。
その後はバイトがない日もお店に入り浸たり、そこでできた仲間たちと楽しく遊ぶようになる。
そしてこんな風に思うようになったのを覚えている。
「バカにしたやつらをプロのベーシストになって見返してやる」
これが僕のミュージシャンを志すきっかけなの…かな?
25年前の話だが、なんともつまんないものである(笑)
因みに新しいベースは、5月の給料日後に買うことができた。
新しい環境と新しい楽器を手に入れた僕は、ちょっと変わった青春を謳歌し始めることとなる。
つづく